「自分で稼げば何でも買える」4歳児に伝えるサバイバルお金論

小さい頃、欲しいものがあったらどうしていましたか?

1、両親や祖父母に相談してお金をもらう
2、お小遣いをためる
3、お年玉が入った時に買う

私の選択肢はこの3つでした。

 

「ほしいものを買うために、自分で稼ぐ。」
この4つ目の選択肢を自ら選んだのは、まだ4歳の女の子、柳原楓ちゃんです。


左:柳原楓ちゃん、右:柳原優希さん

楓ちゃんは「自分で稼ぐ」ため、絵や手づくり作品を販売するネットショップ「おえかきおみせ」をお母さんの優希さんと共にはじめました。

その活動の裏には、自らも別のネットショップを運営しながらフリーライターをしている優希さんの子育てへの願いがあったのです。

しかし4歳の女の子がネットショップを運営する時代が来るとは…!
そんな驚き半分、興味半分の思いを抱いて、楓ちゃんと優希さんに会ってきました。

「お金がほしい!お店をやりたい!」


楓ちゃんの作品を販売するネットショップ「おえかきおみせ」。絵やプラ板などが出品されている

佐藤

まず、「おえかきおみせ」を始めたきっかけを教えてください。

柳原

ある時、お店で5000円くらいのおもちゃを見た楓が「これ欲しい!買って!」って言い出したんです。「え〜、ママは買わないよ」と答えると、しばらくおもちゃを見つめて「じゃあ、自分でお店をして、そのお金で買う!」と。そこで私は、面白いじゃない!と素直に思ったんですよね。

佐藤

お店で絵を販売することにしたのはどうしてだったんですか?

柳原

娘に何を売るのか聞いたら、最初は「お洋服!」と返ってきて。でも、洋服を売るなら私が最初の仕入れ資金を用意することになりますよね。そうじゃなくて、せっかくなら娘が自分でゼロから生み出したものでお店をやってほしいと思ったんです。そこで「お洋服を買うのにもお金がいるよね?」と伝えると、「じゃあ、自分で描いた絵を売るよ!」「それいいじゃない!」というやりとりを経て、今の形になりました。

佐藤

稼ぐことの大変さを一から体験してほしかったと。

柳原

そうですね。でも同時に、親としては「成功体験」も残してあげたくて。仕事が評価されなかったり、リアクションをもらえなかったりすると、モチベーションが下がってしまいますよね。それは小さな子でも同じなはず。だから、もしお店の商品が売れなくても、失敗ではなく何かしらの成功体験に結びつくようにしたいと思ったんです。

佐藤

お店の商品の値段も、楓ちゃんが決めているのですか?

柳原

はい、娘本人です。お金の価値をあまり理解していないので、「10円玉何枚、100円玉何枚」みたいな言い方ですけど。「100円玉7枚ほしいんだ、じゃあ700円ね」というやりとりで決めています。ただ、商品が売れてからお金が振り込まれる仕組みまでは、さすがに理解できていなくて。

佐藤

ネットショップでのお金のやりとりは、子どもにとって少し複雑ですもんね。

柳原

はい。だから買ってくれた人からお金が届くという設定にして、私がポストにこっそりお金を入れているんです(笑)。「そろそろお金が届く頃かな〜?」と娘に言うと、「見てくるね!」とワクワクしながら取りに行きます。

佐藤

それは面白いですね!

柳原

本当は、バザーみたいにリアルな売買の仕組みを体感できる方がよかったんですけど、なかなか難しかったのでネットショップを使いました。ただ、自分で売れたという実感がないといけないと思っているので、売れた商品の発送作業は娘にできるだけやらせています。宛名は私が書きますが、発送元の名前を書くのと、ポストに持って行くのは娘です。

佐藤

いまは何枚くらい売れたんですか?

柳原

知り合いの方を含めて、10人ほどが購入してくれました。楓もすごく喜んでて、味をしめたのか「また売れた?」って聞いてきますよ(笑)。売り上げはおもちゃを買うために貯めているところです。

「稼ぐ力=生きる力」を小さい頃から

佐藤

以前から、お金の感覚を楓ちゃんに持たせようという思いはあったのですか?

柳原

「おえかきおみせ」を始める前から、お金の存在や役割を日常のなかで体感させようとしていました。例えば、娘がねだったお菓子を私のお金で買うときも、レジへ並んでお金を出すのは娘に。なんとなくでも、お金は必要なもので、使うと減っていくことは知っておいてほしいんです。

佐藤

優希さんのnoteにも、「稼ぐ力=生きる力」を小さいうちから身につけてほしいと書かれていましたよね。とても興味深かったのですが、そうした考えはいつから?

柳原

私の海外での経験がきっかけですね。大学生の頃に、長期の休みを利用してニュージーランドに滞在していたんです。当時は学生でお金がなかったのですが、親のお金を使いたくもなくて。そこで何か手伝う代わりに、住まいと食事を無料で提供してもらう「Helpx(ヘルペックス)」というサービスを利用して、マカデミアナッツの農場に滞在しました。その農場の夫婦は元々、南アフリカの海で遠洋漁業をしてたんです。二人のお子さんの子育ても船の上だったので、学校という選択肢はなく「生きていくのに必要なことは、私が子どもに教えた」とお母さんは言っていて。

佐藤

日本では珍しそうなケースですね!

柳原

子どもたちは船を下りたあと、大学から学校に通い始め、今は結婚して農業をしながら幸せに暮らしているそうです。私はそのエピソードがすごく衝撃だったんですよね。というのも、私は「学びの場=学校」で、学校に行くのが当たり前という考え方に疑問を持ったことはなかったから。でも、その夫婦の子育てを知って、そもそも「必要な教育ってなんだろう?」って思ったんです。学校という括りに関係なく、考え方や生き方を学ぶ環境は人それぞれでいい。むしろその方が人に大きな影響をもたらすのではと。幼少期は特に、「生きる力」を伸ばすのは親の仕事。これからの時代は自分の価値やスキルがますます重要になるはずですから、子どもにもそのことを早いうちから考えさせたかったんです。

佐藤

日本を出て、優希さんが気づいたことなんですね。

 

柳原

私はアメリカの人と付き合っていたことがあって、その当時から海外の人はそもそもの思考回路が違うと感じていたんです。彼の転職活動を見ていると「自分はこんなスキルがあるから、これだけの対価が欲しい」と臆さず主張していて。そんな風に堂々と主張できるのは、育ちや環境の違いが大きいと思います。自分の意見を明確に示すのが当たり前の社会と、主張することが必ずしもよしとされない価値観の日本では大きな違いがあるなと。

佐藤

最近、日本のマネー教育の遅れも問題になっていますよね。

柳原

今まで、いろんな国の人と関わることが多かったんですが、宗教によってもマネー教育の違いは大きくて。日本は「お金儲け」とか「稼ぐ」という響きにネガティブなイメージがありますが、ユダヤ教でお金は「潔きもの」。小さい頃から「お金の使い方(運用)を積極的に教える」という文化なんです。一方、中国は値切りの文化。日本では値切るのを後ろ向きに捉えがちですが、中国の友達からは値切る話が本当によく出てきます。ネットショップで買い物する時でさえ値切り交渉をするんですって。これは本で読んだんですけど、「売買」を日本では「売り買い」と書きますよね。でも中国では「買売」って書くそうで。つまり、まず「どうお得に買うか」という教育が根付いているんです。

佐藤

宗教観がその国の教育とも関係しているんですね。

柳原

深く辿ると、教育としても立派な教えなんですよね。宗教的なお金の考え方が違うから価値観も違う。そうやって考えていくと、やっぱり環境が子どもに与える影響はとても大きい。だからこそ環境づくりは親の仕事だと思います。例えば、海外の人たちと接する中で様々な価値観のいいところを学べる機会をつくるとか。ますますグローバルになる社会で生きていく以上、子どもには多様な価値観を早くから知っておいてほしいんです。

生後6ヶ月の子を背負って窯元をめぐった

柳原

話が変わるんですが、実は私もお店をやっているんです。

佐藤

どんなお店なんですか?

柳原

「ぼくのてがたのうつわ」という名前で、子どもの手形が入った波佐見焼のお皿を販売しています。最初は娘の誕生記念に、手形の入った記念品を残したかったんですね。あの丸っこい手は赤ちゃんの時だけの特別なものなので。

柳原

でも、当時市販されていた記念品は飾っておくタイプがほとんど。私は、せっかくなら日々の生活で使える形がいいと考えていたんです。そこでひらめいたのが食器です。もともと料理好きで器にもこだわりがあったので、自分の子どもの手形入り食器なら絶対に欲しいと思いました。でも、そんなものはどこにも売っていなくて……じゃあ自分で作ろうと、生後6ヶ月だった楓をおんぶして長崎の窯元を巡ったんです。

佐藤

すごい行動力ですね!

柳原

実は1年、家族で長崎に住んじゃったりもして…(笑)。最初はどの窯元さんにも「赤ちゃんを連れた主婦が何を言ってるんだ?」と門前払いでした。当たり前ですよね(笑)。でも唯一、思いに共感してくださった方と一緒にお皿づくりを始めて。最初は商品化は全く考えていなかったんですけど、SNSにあげると「同じものを自分の子どもの手形でつくって欲しい!」とすごく好評で。そこでお店を立ち上げて、窯元さんと二人三脚でやっています。

佐藤

優希さんはライターとしても活動されていますよね。出産・育児と忙しい日々を過ごしながら、さらにお店まで!

柳原

私、社会人経験が半年しかないんです。もともとテレビ局の総合職だったんですが、すぐに結婚を機に退職して、その3ヶ月後に楓を妊娠しました。でも、自分は専業主婦が向いていないことも分かっていて、変な焦りがありました。就職活動もしましたが何か違う気がして、とにかくアクションを起こそうと食器のネットショップをはじめたんです。その後、苦労もありましたが、フリーランスとしてライティングの仕事ももらえるようになってきました。でも、月々の収入は不安定ですし、未だに迷いの連続です。やっぱり、お金を稼ぐことを知らずにきたから、本当に大変で。

佐藤

そんなご自身の経験が、子育てに生かされているんですね。

柳原

そうですね。だからこそ、子どもたちに早い段階から「お金を稼ぐ」感覚を身につけてほしかったのかもしれません。

佐藤

子どもたちには、これからどんな風に大きくなってほしいですか?

柳原

ど直球で難しい質問ですね(笑)。ある程度は先を考えて、なりたい自分に向かって生きてほしいと思います。やっぱり、本人がどうなりたいかを大事にしてほしい。例えば、進路を選択する時に「こうなりたいから、どうしてもここに行きたい!」と親を説得できるぐらいのものを見つけてほしいですね。あとは、枠にとらわれずにチャレンジする性格になってくれたら。親はいろんな選択肢を与えてあげる。その中から子どもが自分と向き合い、気づいて、認めて、少しずつ自信を積み重ねて成長してくれたらと思います。

区切り線

余談ですが、楓ちゃんが「おえかきおみせ」の次に始めたのはなんと、フレンドファンディング「polca」(※)。

※身近な友人や知人からお金を集め、企画を実現するためのアプリ。クラウドファンディングと異なり、URLを知っている人のみが企画を閲覧・支援できる。


楓ちゃんのpolcaページ

本人はなんとなく仕組みを理解していて、とにかくお絵描き道具を増やしたいという感じだそう。
優希さんとしては、支援をもらい活動を広げることに加え、楓ちゃんが「先行投資をしてもらう感覚」を少しでも学べたらと始めたそうです。

子どもの頃に身についた金銭感覚は、大人になっても変わらないといわれます。

これから、さらにボーダレスな世界となり、働き方も多様になります。
そんな時代を生きる子どもたちは、絶対にお金の感覚を身につけておいたほうがいいのだと思います。お金の大事さ、稼ぐことの大変さや喜び、やりくりの方法、そして恐ろしさについても。

お金は「生きるための手段」であると同時に、自分がどのように生きていくかを考えるためのもの。その両方を知ることこそが、子どもの大事な未来をつくると思うのです。

書いた人 : 佐藤めだか

ライター、編集者として活動しながら、バンコクに数年間移住してみたり。
現在は東京のはしっこで2児の母をしながら、ぼちぼちライターをやっています。

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