普通の商店街に地元民が殺到! 空き店舗を開放する「逆転の発想」

あなたの地元には「商店街」があるだろうか。あるとしたら、そこは賑わっているだろうか。

都市部でも地方でも、いわゆる「シャッター商店街」が増えている。筆者の住む都内の駅前商店街もそのひとつだ。コンビニやスーパーが増えているためだろうか。なんだか寂しいなと思いつつ、何もできていない。

かたや地方は車社会になり、郊外への大型店舗の進出で商店街は苦戦していると聞く。人が東京に流れ、人口も少なくなっている。

地元が好きだから何かしたい。でもどうすればいいのかわからない。そんな人もきっと多いはずだ。

CAMPFIREでクラウドファンディングによる「開き店舗プロジェクト」を立ち上げた吉田安(よしだ・やす)さんも、そんな思いを抱いていたという。

吉田さんは大分県大分市出身。早稲田大学の社会科学部に通う2年生だ。


現役早大生、地元・大分の「空き店舗」を【開き店舗】に

「開き店舗プロジェクト」とは、大分市の商店街にある「空き店舗(あきてんぽ)」を1ヶ月間貸し切って、誰に対しても開かれた空間「開き店舗(あきてんぽ)」にするというもの。

コーヒーを飲みながら一休みするも、趣味で作った作品を展示・販売するも、音楽を演奏するも、誰がどう使ってもいい場所をつくったのだ。


プロジェクト期間中の「開き店舗」の様子。この日はマーケットが開催され、にぎわった

プロジェクトにおける吉田さんの最大の目的は、街を調査することだった。どんな年齢層の人がいるのか、街の人たちは地元にどんなことを求めているのか?「どんな風に使っても良いフリースペース」があれば、大分の人たちは一体どのように使うのか?


プロジェクトページより抜粋

吉田さんがオープンした「開き店舗」には、驚くべきことに老若男女問わず、通算800人以上の人が足を運んだ。そして時にはライブハウス、時にはコワーキングスペースへと表情を変えた。

フリースペースを作るだけで、これだけの人が集まり、活気が生まれた。ここにはきっと、商店街の賑わいを取り戻すヒントがあるに違いない。吉田さんに、プロジェクトについて詳しく話を聞いた。

今回やったのは、どれも「開き店舗じゃなくてもできたこと」


「開き店舗」として使った物件。元々は何もない、空っぽの状態だった

「開き店舗」に、地元の人はどれくらいやってきたんですか?

来てくれた人数は通算800人くらいで、平均すると1日40人前後ですね。年配の方とか、私くらいの若者とか、ライブをしたバンドのファンの中高生とか、年齢層はいろいろでした。

一番の目的は調査だったので、いろんな人の話を聞けたのは良かったです。「結局はどういう場所が必要なんだろう」「何が求められてるんだろう」とか、街に対する意識について話しながらメモをとりました。

来てくれた人と普通に話しつつ、スペースも自由に使ってもらう、と。

はい。気づいたら、ひとつの空間で4通りの使い方をしてる時もあって面白かったんです。ライブとフリーマーケットをやっている横で、コワーキングスペースとして使っている人もいて、それにすみっこでは私がコーヒーをいれてたので、コーヒースタンドみたいにもなっていて。

本当に多様な使い方をされていたんですね!

そうなんです。しかも、来る人によって空間の色が全然違うんですよ。朝はママ友さんたちが集まっておしゃべりしてる横を、子どもが走り回っている。昼はおじさんがコーヒーを飲みに来たり、大学生がトランプをしてたり、夜になったら大人がタバコをふかしてたり。

「開き店舗」のドアはずっと開けてたので、ファンキーな音楽を演奏してるところに、たまたまおばあちゃんが来て聴き入るみたいな不思議な瞬間もありました(笑)。

Instagramを見ると、ライブイベントもよく開催されていたんですね。

はい。音楽をやってる知り合いに声をかけてみたら、そのつながりで弾き語りの人やバンドの人たちが集まってきてくれて。

地元にライブハウスもあるんですよ。でも、開き店舗はライブの場所として何度も使われました。そこで私が思ったのは、開き店舗でやったのは全部「開き店舗じゃなくてもできたこと」なんです。ライブも、ものを売るのも。

それは面白くもあったんですが、「もっと今あるものをうまく使うことはできないのかな?」とも思いました。みんな「地元なんて何もない」って口々に言うけど、実はなんでもあるんじゃないかな?って。

ライブハウスもあるし、フリーマーケットをやるなら公園や公民館もありますね。

やろうと思えば場所はあるけど、そんなに自分の時間を使って探すほどじゃない。そこに「たまたま開き店舗があったから、やろう!」みたいな人がいっぱいいたのかなと思います。そういう潜在的な願望を引き出せた一方で、課題も見えてきたというか……。

「なんでもしていいよ」って場所が用意されていないと、人は行動を起こすきっかけが持てないというような?

「好き・得意だけど、職にするほどではない」ものを披露する場が、街の中に全然ないことですね。

たとえば学生で作品を作ってる人や、会社に黙って副業で絵を描いてる人だと、発表のためにギャラリーを借りるハードルって高いじゃないですか。

知り合いのシェフでハンドメイドが趣味の人から、「わざわざ場所を借りて売るようなものではないんだけど、せっかくだから『開き店舗』に置かせてほしい」と言われました。

そういう、プロとアマチュアの間くらいにいる人の欲求を満たせる場がもっとあればいいなって思いました。

なるほど、地元の人の「やりたいこと」を引き出せるコミュニティというか。

あ、でも「コミュニティ」ではないんです。むしろ「開き店舗」ではコミュニティができないようにしてた面もあって。

というと?

ある地元の人が「街づくりは市民全体のことを考えなきゃいけないから、閉じた状態でいつも同じ人が同じことをしていたらダメなんだ」と言っていたんです。「開き店舗」も、コミュニティができちゃうと新しい人が入りづらくなる。

でも1ヶ月限定だったから、コミュニティができる前に終わることができたと思うんです。空間に入りづらさを生みたくなかったので、そこは良かったなあと。

「地元を盛り上げたいのに、地元の現状を知らない」と気がついた

吉田さんは高校までずっと大分で?

そうですね。小さい頃からよく大分の市街地に行っていて、当時からなんとなく「あ、あの店閉まった」「デパートの屋上の遊園地が消えた」「映画館なくなった」と思ってはいました。あとから考えると「そっか、あれは衰退してたってことなんだ」と。

衰退を肌で感じていたわけですね。じゃあ元々、大分を元気にしたい気持ちがあってプロジェクトを始めたんですか?

うーん、それよりもまず「商売」そのものに興味があって。

大分の商業高校に通っていた時、地元の商店街と組んで食べ歩きイベントを開催したんです。その日はすごく盛り上がって、通行量もいつもより200人も増えていました。だけど、それはイベント当日だけの賑やかしで終わってしまって。


商業高校時代に開催したイベントのポスター

そこから、どうすれば地域に持続的な賑わいを生めるんだろう?と考えはじめたんです。それで、勉強して色々な視点から地域のことを考えるために大学進学を決めました。

では、今回のプロジェクトをやろうと思ったのは東京に出てからですか?

はい。商業や都市開発を学びたくて今の大学に入ったんですけど……授業で他の地域の事例を学んでるときに「私、大分で何かやりたくて勉強のために東京へ来たのに、大分の街の現状を何も知らないじゃん!」と思って。

「どうやったら街の人のリアルな声が聞けるんだろう?」と考えた自分なりの答えが、今回の「開き店舗プロジェクト」です。街の中に自分の場所を持って、そこで人の声を聞ければなと。

今回、使う物件などはどんな風に決まったんですか?

ほんとに何もわからなかったので、ネットで「大分 店舗 賃貸」って検索しました(笑)。お金も自分の貯金で「5万円くらいあったらいけるのかな?」と思ってたんです。でも、ちゃんと調べたら、そんなお金で店舗を借りるのは全然無理でしたね。

で、普通は1ヶ月だけ借りられないので、不動産屋さんにメールで相談したんです。すると、その方が私の理念にすごく共感してくださって。電気や水道といったハード面も不動産屋さんにすごく助けていただきました。

いい出会いがあったんですね。

地べたの支援「グラウンドファンディング」があればいい

「開き店舗プロジェクト」を終えてみて、見えてきたことはありましたか?

本当に課題だなと思ったのは、街に対する一人ひとりの当事者意識が薄いことです。

たとえば地元のお店が閉店するとき、みんな口々に「なくなっちゃうの悲しい」とか「好きだったのに」と言うけど、結局はそう言うだけで終わりなんですよね。自分たちで守ろうとする意識がないというか……。「若い子が頑張ってほしいわ~」「誰かなんかしてくれないのかしら~」って。

「開き店舗」にしても、私に「頑張ってね~」と言ってくれるのはもちろんすごくありがたいんですけど、次第に違和感が生まれてしまって……。「待って、私だけが頑張る問題なの、これ?」という気持ちはありました。私だけで地元を盛り上げるなんて、絶対無理ですから。

確かに……理想としては「頑張ってね」じゃなくて、「一緒に頑張ろうね」になればいいですよね。

そこはちょっと寂しいところでした。

「なんだかんだ、衰退しても仕方ない」という気持ちがあるってことですよね。僕自身も自分の地元に対してそう思ってしまっている節があります。

その気持ちになるのも仕方がない面はあると思います。商店街って、そもそもは人通りが多いところに作られますよね。でも新しく駅ができたり、車社会になって人の流れが変わってしまうと、どうしても厳しい状況になりますし。

うーん、難しい。「商店街を盛り上げよう」と言っても、そもそも人の流れを変えようっていうのは無理じゃないですか。それこそ「開き店舗」みたいな、いろんな人を巻き込む場所を作るしかないような。

かといってそれも簡単じゃないんですよね。地方の商店街って空き店舗が多いくせに、意外と地価が高いんですよ。

安く借りられる場所がひとつあればいいですよね。資金面に関して、クラウドファンディングをやることは最初から決めていたんですか?

いえ、自分のお金だけでは物件を借りられないし、どうしようと思っていたんです。クラウドファンディング自体、今まで自分で支援したことはなくて……「自分がプロジェクトを作る」という発想はなかなか出ませんでしたね。

でも大学のサークルにクラウドファンディングをやったことのある人がいて、アドバイスをもらったんです。

そもそも若者や地方の人は、クラウドファンディングに触れる機会がまだまだ少ないと感じます。

そうですね、自由になるお金も少ないですし、クレジットカードを持ってない人もいますから。実際、大分の友達から「支援ってどうやればいいの?」という連絡はかなりもらいました。

商店街の方からも「支援のやりかたが分からなかったから」と言って現地で直接お金をもらったことがありました。それを地元の方が「グラウンドファンディング」って名付けてて(笑)。

いい言葉ですね(笑)。地べたでのクラウドファンディングって感じでしょうか。他の地域でも現金手渡しの話を聞いたことがあります(※)。やっぱり東京のほうが、クラウドファンディングに馴染みのある人は多いですよね。

(※)BAMP「なぜ今、30代編集者が「店づくり」に挑むのか? オンラインとオフラインの境界線に宿る価値」

でも、支援してくれた人の多くは大分の方でした。母校の商業高校のつながりで、商店街の理事長さんがプロジェクトのことを広めてくださったりもして。ありがたいなと思います。

「開き店舗」をやっているときに思ったんですけど、「グラウンドファンディング」を本当にやれたら面白いですよね。商店街に募金箱を置いておいて、「この人にはこういう夢があります。応援お願いします!」という感じで。「パン屋さんをやりたい」みたいなその人なりの夢を応援できる募金があったら、街全体が楽しくなると思うんです。

いいですね。募金というと、災害や非常事態のときにするイメージがありました。

「開き店舗」をやっていて、みんな、「プロジェクトまでにはしないけどやってみたい夢」があるんだなと感じたんですよ。街全体を挙げて、そういう表に出てない「やりたいこと」を実現できるような仕組みがあればなあって。特に、学生だとお金もないですし(笑)。

でも、私がやったこと自体、大学生じゃないとできなかったことだなといろんな意味で思いました。

どういうことでしょう?

今回のプロジェクトには、「あえて何もしない空間をつくる」が裏テーマとしてありました。「こういう空間にしたい」とこちらから提示しちゃうと、最初から色がついてしまう。私が知りたかったのは、逆に「何もしないで居たらどんな空間になるんだろう?」のほうだったんです。

でも、その「何もしない」ということが、社会人になると逆に難しい、ということもわかってきて。

当たり前ですけど、どうしても「仕事」になってくるんですよね。学生だからこそ応援してもらえるけど、もし大人が「ただ1ヶ月開けてます」というプロジェクトをやっていたら……周囲からの目も違うと思いますし。

確かに、「結局何がしたいの?」をもっと求められそうな気がします。「高校や大学を出たら新卒で就職するのが普通」のような空気がまだ強かったり、「何もしないこと」に不寛容というか。

「開き店舗」をやっていると、そこが「やりたいことをやれる場」であると同時に、「何もしなくていい場」でもあることも大事なのかなと思いました。

主婦の方が、「家にいると『あれもしなきゃ、これもしなきゃ』って追われちゃう」と言っていたんです。よその家や空間に行って、ほんとに何もしないでいられる空間が、今の時代には需要があるのかなって。

いろんな発見があったんですね。吉田さんは大学2年生になったばかりですが、これから先は何をしていくんでしょうか?

「開き店舗プロジェクト」の次は、まだ本当に何も考えてなくて。まずは今回集めたデータを分析して、何が必要なのか考えたいですね。あとは商売や商店街に限らず、いろんなことを勉強してみたいです。

今回のプロジェクトって、地方だからこそこんなに注目してもらえたと思うんです。もし東京でやってたとしたら、そんなに目立たなかったはず。

そこに少し悔しさはありますけど、逆に考えると「地方だと応援してもらいやすい」ってことでもありますよね。これからも色々なことに挑戦して、その蓄積をもとに、また地元にいつか貢献できたらなと思います。

現役早大生、地元・大分の「空き店舗」を【開き店舗】に
  • プロジェクトURL
    https://camp-fire.jp/projects/view/124196
  • 内容
    地元をワクワクさせる人になりたい!と思い上京した大学1年生が、街の中にどう使ってもいい空間「開き店舗」を作ります。そして、街の人が商店街に何を求めるか、空間と通りがどう変わっていくか調査し、未来のこの街のまちづくりについてのヒントを掴むためのプロジェクトです。
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書いた人 : 大島一貴

履修ミスで留年し、ウロウロしていたところをHuuuuに拾われる。東京都杉並区育ち。東大文学部に在学中。みかんの消費量を増やす団体「東大みかん愛好会」で日々暗躍している。夏は汗っかき、冬は末端冷え性で一年中地獄。

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