不登校から社長へ。ゲーマー少年を変えた、地元・和歌山への思いとは?

地方からでも挑戦できることを伝えたい

「和歌山を輝かせる!」をテーマにさまざまなプロジェクトを立ち上げている小幡和輝(オバタ・カズキ)さん。

2016年にはクラウドファンディングで資金を集め、和歌山の名産品を絵柄にした「わかやまトランプ」を制作。2017年には日本全国で地方創生に関わる人を和歌山に集める「地方創生会議」を主催するなど、精力的に活動している。

しかし、中学校までの彼は1日のほとんどをゲームに費やし、学校に行かない少年だったという。そんな小幡さんはいかにして高校3年で起業し、社長になったのか? そして、和歌山のために活動する理由とは?

小幡和輝

プロジェクトデータ
  • プロジェクト名
    和歌山の子供たちにわかやまトランプを届けたい!!
  • 支援総額/目標
    307,000円/100,000円(目標の307%・28人が支援)
  • 内容
    和歌山が大好きな人を増やすため、名産品などを絵柄に入れたトランプを作りたい

不登校のゲーマーが、とある出会いで実業家へ

万谷

小幡さんは実業家でもあり、大学生でもありますよね。

小幡

和歌山大学観光学部の4回生です。会社が忙しくて大学へは全然行ってないように言われるんですが、卒業に向けて、ちゃんと出席していますよ。卒論は主宰する「地方創生会議」をテーマにする予定です。地方創生という言葉はよく使われるようになりましたが、実態はどうなんだと思うところがあって。

万谷

大学生活も充実してそうですね。しかし、小中学校の頃はあまり学校へ通えていなかったと伺ったのですが。

小幡

実は、中学校まで不登校の経験があります。3歳くらいの幼稚園のころから小学2年生の半ばまで、学校には行ったり行かなかったりの状態でした。「行かないと怒られるから行く」程度で、自分から進んで行ったり、学校が楽しいと思ったりした記憶はないですね。そうしているうちにいじめられたり場に居づらくなったりして、小学3年生から中学卒業までは登校していません。

万谷

なるほど。学校に行けなかった時期は、家でどんな風に過ごしていたんですか?

小幡

ゲームですね。いとことファミコンをしていましたし、トランプもよくやっていましたね。ゲームは運の要素と実力の要素がバランス良く混ざっているものが好きです。トランプはその場その場で運の要素が絡まってきて、臨機応変に柔軟に対応する必要がありますよね。それまでに積み重ねてきた実力の部分と、手札や相手がどう出るかわからない運の部分が混ざり合って結果が出る魅力があります。トランプなどのカードゲームは1ゲームにかかる時間が短いものが多いので、気軽に場所を選ばず遊べるのもいいですね。

「和歌山が好き!」な人を育てたいimage4

万谷

家でゲームに没頭していた日々からまだそれほど経っていませんが、現在の小幡さんは全く違う人に見えるので、不思議に思います。どこかで変わるタイミングがあったんでしょうか?

小幡

定時制高校に通っていた時に出会った人たちに、ものすごく刺激を受けたからですね。特に影響を受けた友人が一人いて。学校は違ったのですが、高校の勉強と部活だけではなく、アルバイトにバンドに、イベントの企画などもしていて。同世代なのにすごいなと憧れを感じました。その彼に「イベントをするんだけど手伝ってくれない」と誘われて、スタッフとして1年くらい、イベントの受付やステージの裏方を担当しました。そこでいろいろな人に会ったことをすごく楽しく感じたんです。その1年間で、自分の性格や考え方が変わりました。そこから自分で何かをしたいと思いはじめ、イベントを企画するようになります。

万谷

高校生がイベントを企画するのは大変だと思うのですが、うまくいきましたか?

小幡

1回目は50人想定のところ、お客さんが5人しか集まらず大失敗でした。何もしなくても人が来てくれると思っていたんですね。それが悔しくて、次からFacebookやTwitterのアカウントを作って、高校生と思われるアカウントにどんどんメッセージを送り、イベントを告知する努力を始めました。その結果、次は定員50人のところに70人以上が来てくれて、それ以降も多いときは100人以上が集まるようになりました。ほとんどが高校生です。

万谷

それはすごいですね。

小幡

当時は和歌山に発表するための場所が少ないと感じていたので、カフェのスペースを借りてステージを作り、発表できる場を作ったり、先生になって自分の好きなことについて授業をしたりと、高校生が中心になって周りの人に何かを提供する場所を作りました。それはすごく楽しかったんですけど、ふと、和歌山を好きな人ばかりが集まってきているぞと気づいたんです。そもそも和歌山を好きな人を増やしていきたいと思っていたのに、すでに和歌山を好きな人ばかりが来ているなと。人を集めるのは楽しいし、これを何とか仕事にしたい。でもこのままじゃだめだと思うようになって。本気で取り組む覚悟を決めるために会社を設立しました。それが2013年、18歳のときです。

万谷

どこかに就職するのではなく、会社を作るという発想がすごいですね。

小幡

作ることに迷いはなかったですね。
イベントを企画していたときも、高校生という肩書だけでは契約でつまずくことが多かったですし、本気でやっていることがなかなか伝わらずに歯がゆい思いもしていましたから。会社になればそういう点もうまく進むだろうと考えていました。
それに、起業すると、代表取締役という言葉と並んで自分の名前が書類に書かれるようになるじゃないですか。それだけでも頑張る原動力になったんです。会社を作ったものの「お金ってどうやってもらったらいいんだろう?」などわからないことはたくさんありましたけども(笑)。

トランプで遊びながら和歌山を知ってほしい!

万谷

会社の活動の一つとして、昨年、CAMPFIREで資金を集めて「わかやまトランプ」を作られましたよね。そのきっかけを教えてください。

小幡

「わかやまトランプ」を作ろうと思ったのは、和歌山のことをもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思ったからです。僕は和歌山を輝かせたいと思って活動していますが、僕個人の力なんて限られています。一人で「和歌山はこんなにいいところだ」「こんなものがある」というPRをどれだけやったとしても、伝えられる人数は知れていますよね。ならば、さまざまな人に和歌山を好きになって、語れるようになってもらおう、観光大使になれる人材を育てようと思ったんです。それにはまず、和歌山を知ってもらわなければいけない。そこで和歌山の名産品を絵柄に取り入れたトランプを作って、遊びながら和歌山のことを知ってもらおうと考えました。

「和歌山が好き!」な人を育てたい。不登校から社長へ、小幡さんの挑戦image1

万谷

自分の出身地でも、知らないことは多いですよね。

小幡

そうですね。僕も今では和歌山のことをよく知っていますが、以前は知らないことばかりでした。同じ和歌山でも、地元の湯浅町のことなら「醤油の発祥地ですよ」「こんなにすごいものがありますよ」と語れましたが、地元以外の地域ではそんなことはなくて。誰でも自分の地元ネタなら語れるので、それを持ち寄れば県全体のいいものが集まります。そうやっていろんな人からネタを集めました。また、「トランプ」という形にしたのは、楽しめるものだから、特に子どもから大人まで、場所を選ばず一緒に遊べるものだからです。学校の授業で使いやすいかなという気持ちもありました。

クラウドファンディングで「作りたい!」と宣言するのはノーリスク

万谷

それをクラウドファンディングで製作しようと思ったのはなぜですか?

小幡

CAMPFIREでページを作ってチャレンジするのは、初期投資が不要でリスクもほとんどありません。トランプは印刷のためにとても費用がかかるので、支援金という形でお金が集まるのは魅力でした。おかげさまで多くの支援をいただき、無事に製品化できたので、本当にうれしく思っています。もう一つの理由は、誰でも資金調達にチャレンジできる仕組みがあるのに、そのことを知らない人が多いと感じていたからです。自分が利用することで、少しでもクラウドファンディングという仕組みを知ってもらえたらなという思いもありました。

「和歌山が好き!」な人を育てたい。不登校から社長へ、小幡さんの挑戦image2

万谷

クラウドファンディングの仕組みを知らない人はまだまだ多いですよね。

小幡

その通りです。製品化できた「わかやまトランプ」をBASEで売っているのですが、ネットショップが0円で開設できて、技術も資金も使わず、商品を全国に販売できるってすごいことですよね。社会や企業はチャレンジをサポートしていこうという風潮になってきていて、BASE以外にも様々なサービスがありますよね。でも、チャレンジする側はそれを知らない人が多い。株式会社設立のための資本金が、まだ1000万円必要だと思っている人もいるくらいです。それってすごくもったいないですよね。僕は自分が地方にいる人たちのロールモデルになれるよう、率先していろいろな仕組みを活用したり新しい働き方を実践したりしていきたいと思っています。和歌山で起業する人が増えてほしいですし、活動して注目が集まると、自分自身へのプレッシャーにもなりますしね。もっとがんばらないと、周りから見られているぞと(笑)。

万谷

チャレンジする人が増えてほしいと思う理由はなんでしょうか?

小幡

特に地方において、インターネットが発達して以降、状況が全く変わったと思うんです。地方に住んでいても東京の人と変わらない仕事ができるようになり、「地元にいながら、かっこいい仕事をする」という選択肢が生まれています。地元にいるから地元のことしかできないという考えにとらわれてほしくないと思っていて。生活コストの安い和歌山にいながら、東京と同じ仕事ができるのは最高ですよね。自分がやりたいことができて、収入も得られる。大学進学で県外へ出たとしても、県内の企業に就職するだけでない多様な働き方が実現できるのであれば、地元に帰ってきやすいような気もします。だから、自分で何かをやってほしいなと思っているんです。

「和歌山が好き!」な人を育てたいimage3

万谷

そういう方々のロールモデルになれればというだけあって、小幡さんもさまざまなチャレンジを続けられていますね。

小幡

昨年は自分自身でプロダクトを提案し、資金を集めたり販売実績を作ったりと数字にこだわって活動しました。今年は6月に高野山で開催する「地方創生会議」が最大のチャレンジですね。地方創生に関わる熱い人を47都道府県から和歌山に集めるイベントです。実践している人が集まって発表したり意見交換したりする場が、ありそうでなかったんですよ。だから自分でやってみようと。それぞれの地域で「地方創生」という共通のことをやっている人が集まるわけですが、商圏がかぶらないので、本音が出しやすい会議になると思います。悩みの共有をしやすいだろうし、自分の地域が外からどういうふうに見えているか知ることで視野も広がりそうですよね。それぞれがメリットのある会議に必ずなります。そして、全国の地方創生の事例が集まる場が和歌山で開催されることが、後々に大きな意味を持ってくるはずです。

万谷

チケットはCAMPFIREのプロジェクトで販売し、開催1ヶ月前に完売しましたね。

小幡

とても嬉しかったです。会議は1泊2日で、高野山ならではの宿坊に泊まってもらうことにこだわりました。ただ、宿坊の数に限りがあり、参加したくてもできなかった方がいると思います。2回目以降の構想もありますので、今回はチケットを買えなかった方には、次回に期待していただけたら。

これからも和歌山に根ざし、和歌山を輝かせていく

万谷

会社設立から4年が経ちましたが、手応えはありますか?

小幡

そうですね、4年間でもいろいろ変わりました。最初はイベントをすることしか知らなかったので、イベントでお金を稼ぐしかなかったんです。どうやったら参加費が、それもたくさんもらえるのか?とばかり考えていました。それから自分が講師になって、全国を講演活動で回るようになりましたが、会社の売上でいちばん多いのが自分の講演料ってどうなんだと思って(笑)。それで、「わかやまトランプ」を作ったり、「地方創生会議」のような場作りをしたり、毎年自分がやるべきことを考えて、チャレンジの形を変えていくようにしました。

万谷

これからの事業展開はどのようにお考えですか。和歌山にこだわらず、東京や世界で事業をすることもできると思いますが。

小幡

僕がやりたいのは和歌山を輝かせることです。それは自分の会社の売上が上がったり事業の規模が大きくなったりしたからといって達成できることではないと思います。単純に事業を拡大させる方向ではなく、和歌山に住んでいる人や和歌山に関わっている人が変わるような何かができればいいなと。仕事観の話になりますが、僕は自分自身が体験していないことはできません。和歌山で生まれて育っているから、輝かせたいと思う対象が和歌山ですし、活性化してほしいと思うのも和歌山です。それ以外の地域に対して同じような気持ちは持てないんです。他の誰かができるのであれば任せればいい。「自分がやる意味がある」「ほかの人にできない」と思ったものを作ったり広めたりしていきたいですね。

万谷

「地方創生会議」の直前でお忙しい中、ありがとうございました。最後に、小幡さんにとって「小さな声」ってなんでしょう?

小幡

「こんなのあったらいいのにな」という個人の想いだと思います。それを「万人ウケしないから」と否定してしまうのではなく、商品、サービス、イベントなど形にしてまずは発信してみてください。インターネットを通じて、同じ想いを持っている人には必ず届きます。

プロフィール
小幡 和輝(おばた・かずき)
1994年生まれ。10年近く不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームをして過ごしていた(過去にプレイしたゲームのプレイ時間をトータルすると30,000時間を超える)。中学校を卒業後、定時制高校に入学し、校内、校外でさまざまな経験、人と出会い人生が大きく変わる。その後、高校3年で起業。「高校生社長」と呼ばれるようになり、「和歌山を輝かせる!」を活動テーマにさまざまなプロジェクトを立ち上げる。
http://www.nagomiobata.com/

BASE「わかやまコンシェルジュ」

書いた人 : 万谷 絵美

和歌山県在住。関西学院大学総合政策学部卒、専攻はまちづくり。主婦期間を経て、2005年にフリーランス、2015年から地方発のPR会社・Crop代表取締役。

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