「挫折しない限りは努力できる」少年ジャンプで育った学生絵師の野望

「自身に重ねたアニメーション」の卒業制作で目指すもの

ツイッターには、いろんな情報が流れてくるから面白い。
その日もぼんやりと自分のタイムラインを眺めていたら、こんなツイートが流れてきた。

何このイラスト、めっちゃ味ある!!!!!!

筆者は絵に関して完全にズブの素人だが、「上手い」とか「キレイ」とか、そういう言葉では表せられないオリジナリティを感じた。即座にツイート主のプロフィールに飛んでみる。

村田りょう。ツイートを遡っていくと、多摩美術大学の4年生であることがわかった。

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学生で、この独創性? いったいどんな天才? 何食ったらこんな絵描けるの……?
気になった私は、本人にアポを取って、話を聞いてみることにした。

「NARUTO」から始まる非凡な人生の幕開け

こちらが村田りょうさん。「絵師さんって根暗でコミュ障じゃないの?」という偏見をすべて吹き飛ばす、爽やか好青年。

カツセ

今日はお会いできてうれしいです! よろしくお願いします!

村田

はい、お願いします。ちょっと今日、名刺を忘れちゃったんですけど、代わりに……。

カツセ

え、代わりに……?

村田

画集を持ってきたので、よければ。

カツセ

うおおおお! マジで頂いていいんですか!?

村田

はい、すみません、そのくらいしか用意できなくて。

カツセ

めちゃくちゃうれしいです! 家宝にします!!

カツセ

いやーうれしいです。本当に独特なタッチで、個人的にツボなんです。率直に聞きたいんですけど、あの画風はどうやって確立されたんですか?

村田

昔から、絵を描くことは好きだったんです。でも、「上手くなりたい」って意識し始めたのは、中一で「NARUTO」の模写を始めてからですね。

カツセ

「NARUTO」がきっかけ!? 意外すぎます!

村田

友達が描いていて、そいつよりは上手く描けるなあと思ったんですよ。で、次のきっかけになったのが「バクマン。」です。

※「バクマン。」
中学3年生の主人公「真城最高」「高木秋人」が、少年ジャンプの人気作家となるために漫画を描き続ける青春漫画。この作品以降、出版社への漫画の持ち込みが増えるといった現象まで巻き起こした、読むだけでめちゃくちゃテンションが上がる名作。

カツセ

完全に少年ジャンプから始まってるんですね。

村田

本当にミーハーでした。「バクマン。」の主人公に感化されて、僕も漫画家になるって思ってましたからね。卒業文集にも、「有名になるぞ、漫画家になるぞ」って書いているタイプですし。

カツセ

めちゃくちゃ意識高いように思いますが…。

村田

昔から「自分は人と変わっている」と思い込もうとしていた凡人でした。高校に入ってもずっとサッカーをやっていたし、漫画の持ち込みなんて、結局大学に入るまで一度もしなかったです。

カツセ

本格的に絵を描き始めたのは、いつからなんですか?

村田

高3の6月にサッカー部を引退してからです。周りが受験に向けて勉強を始めるんですけど、僕はひねくれてるから、漠然と大学に行くのがイヤだなあって思っていて。で、絵を描くのは好きだったから、美大だったら行きたいと思えて、デッサンの勉強を始めました。

カツセ

そんな漠然と勉強を始めて、多摩美術大学に現役合格ですよね? やっぱり天才では……。

村田

補欠合格で、繰り上げでたまたま入れたんですよ。才能があるわけじゃなくて、ただの負けず嫌いだと思っています。

カツセ

そこからも、かなり努力をされたんですか?

村田

高校では自分より絵が上手い人はそんなに見かけなかったので、自惚れがあったんです。だけど、美大に入ったら自分より上手い人がたくさんいることを知って、「ああ、もっと描かなきゃだめだ」って舌打ちしながら思いました(笑)。

カツセ

なるほど、絵を描き始めてから、初めての挫折だったんですね。

村田

いや、なんというか……

村田

「挫折」というよりは、「気付き」ですよね。

カツセ

何それ超かっこいい。

村田

挫折しちゃったらもう負け決定ですけど、挫折しない限りは、努力できるじゃないですか。島田紳助さんが、「才能×努力=実力」みたいな理論を紹介されていたんですけど、自分より才能ある人がたくさんいたなら、僕は努力量でカバーするしかないって気付けたんです。

カツセ

村田さん、天才型かと思ったら、完全努力型だったんですね。

村田

昔は自惚れていましたけど、もっと上手い人がたくさんいることがわかったら、もう地道にやるしかないと思えたんです。それでいつかは才能ある人たちを出し抜きたいですし、25歳で35歳のイラストレーターに勝っていたいので、ひたすら描かなきゃと思っています。

カツセ

めちゃくちゃ野心家だ。

オリジナリティのルーツを辿る

カツセ

村田さんの絵は、本当に独特のタッチだと思うんですよ。とても「NARUTO」から影響を受けてるとは思えない。ほかにルーツみたいなものってあるんでしょうか?

村田

まずは「NARUTO」。そのあと「バクマン。」、それが根本の二つにあることには変わりないです。その後にディズニーとピクサーを経て、ロシアのイラストレーターであるアンナ・キャティッシュさんの絵に衝撃を受け、かなり影響されています。

カツセ

ああー! わかります! ようやくちょっと見えてきた気がする。そうか、ディズニー的なデフォルメ感がありますね。動き出しそうな感じ。

村田

イラストや漫画を描きたい気持ちもあるんですけど、それよりも人を楽しませたい気持ちが強くって。エンターテイメントであれば歌でもお笑いでも何でもよかったけど、僕ができるのは絵を描くことだった。その上でディズニーやピクサーの作品は、僕に大きな影響を与えています。

カツセ

まあ、異論なくトップですもんね、ディズニー。

村田

エンターテイメントって何だろう?って考えたことがあるんですけど、あれは「モノ」ではなく「感情」を売っているんですよね。あと、アニメーションの語源には「命を吹き込む」という意味があって、自分の考えていることをストーリーにして、キャラクターに命を吹き込み、感情を揺さぶり、体験を提供する。これって本当にすごいことだと思ったんです。

カツセ

そこまで考えたこともなかったです。

村田

なかでも僕は、2012年に「シュガー・ラッシュ」と同時放映された「Paperman(邦題:紙ひこうき)」にめちゃくちゃ感動させられたんです。あの作品は今でも本当に好きで、見返すこともかなりあります。


「短い作品なので、今見ましょう」と言って、突然の映画鑑賞

村田

これ、わかりますか? CGの上から手書きの線が加わっているんですよ。一度全部3DCGで作って、そこから2Dに落とし込んでいるんです。

カツセ

うん、なんか、すごいことはよくわかります。

村田

光の入り方や陰影の付け方とかも、ストーリーが進むにつれてどんどん明るくなっていますよね? ほら、早送りするとわかる。これも、言語を一切使わずにアニメーションと背景だけで観客の感情を高めているんですよ。

カツセ

すごい。ディズニーもすごいけど、その鮮やかな解説もすごいです。


ストーリーや映像の素晴らしさは勿論のこと、村田さんの解説によって何倍も楽しくなる。クリエイターの視点ってすごい

「自身に重ねたアニメーション」卒業制作で村田さんが作りたいもの


その場でイラストも描いてもらうという贅沢なお願いもしてしまった

カツセ

村田さんも今、卒業制作でアニメーションを作っていますよね。テーマとか、目標みたいなものってあるんでしょうか?

村田

将来はアニメーションで勝負したいんです。だから、アニメーションを作る人は何を考えているのか、どうしたら見てくれる人の感情を動かすことができるのか、これまでの自分の力でどこまでやれるのか、復習と予習を兼ねてチャレンジしています。この作品を通して、僕が「Paperman」に影響を受けてアニメーションに興味を持ち始めたように、誰かが何かを始めるきっかけになってくれたらうれしいと思っています。

カツセ

一緒に制作しているメンバーも、皆さん尖った作品を作っていそうですよね。

村田

ピクサーを退職して日本にアニメーションスタジオを作った、とあるクリエイターがいて、僕はそこでインターンをさせてもらっているんです。そのスタジオで出会った仲間からつながったメンバーで、ストーリーやキャラクターデザイン、背景など、意見し合いながら作っています。

カツセ

クリエイターの集まりでチームを作るって、個が強いぶん、いろいろと難しいと思うんです。苦労されていませんか?

村田

個々のスキルが高いと単純に「悔しいな」って思うことが多いんですけど、「一緒にやりたい」と思える人と組んでいるので、その人たちと一緒に成長できればいいと思っています。人と関わることで自分の視野が広がるし、自分で考えたストーリーなのに、他の人からの意見によって新たな面を見せることもある。今は、いい作品を作るためには他者の視点は必要だと感じています。


独創的なキャラクターがどんどんできあがっていく

カツセ

CAMPFIREでのプロジェクトも10日を切りました。クラウドファンディングには、どのような狙いがあるのでしょう?

村田

別に、お金が好きなわけじゃないんです。今回クラウドファンディングでお金を集める最大の目的は、「時間を買うため」にあります。僕らは学生なので、制作費を稼ぐためにアルバイトをしなければならない。でも、アルバイトをしている間、制作は止まります。その時間をクラウドファンディングによってつくれたら、僕らはひたすら作品作りに没頭できて、よりクオリティの高い作品を提供できると思っています。

カツセ

めちゃくちゃ現実的ですね。

村田

クラウドファンディングが登場するまで、能力のある学生がその才能を活かしきれないまま、くすぶっていた時代が長く続いていたと思います。僕自身も、そういう人を何人も見てきました。でも、こうして影響力の弱い個人も出資を募れるようになって、本当にいい時代になったと思っています。やりたいことがあって、やる気があれば、そこに支援者が集まる。その人たちに対して、僕らはエンターテイメントで還元する。出資してくれた人たちの期待を裏切らないためにも、リターンの内容をかなり考えましたし、来年4月の公開に向けて、これからも全力で制作していきます。

カツセ

プロジェクト終了まであと少し。応援しています!!

村田

ありがとうございました!

イラストも完成したところで、インタビューも完結。

「今後は支援者の方のみに送るサービスもどんどん提供していく予定です」と話す村田さん。独特なイラストセンスの裏には、負けず嫌いな一面と圧倒的な努力量、そして冷静に現状を分析する戦略性を見ることができた。

まずはプロジェクトの達成と、2018年4月の公開に向けて全力疾走。その後もゲーム制作会社でキャラクターデザインを磨いていく予定だという村田さん。

将来、トップクリエイターとして活躍する彼の姿を見られる日が来るのを、一ファンとして、今から楽しみにしたい。

※プロジェクトは目標金額の150%(約90万円)を達成して終了しました。ご支援いただいた皆さま、ありがとうございました!

【GIFT-ギフト-】自主制作アニメを最高のものにしたい!!
  • 支援総額/目標
    903,500円/600,000円(目標の150%・78人が支援)
  • 内容
    大学生活で受けた影響、学んだこと、感じたことを投影した短編アニメーション「GIFT-ギフト-」の制作。学生最後の制作を最高の形で終わらせたい!

書いた人 : カツセマサヒコ

1986年東京生まれ。明治大学を卒業後、2009年より大手印刷会社の総務部にて勤務。趣味で書いていたブログをキッカケにプレスラボへ。2017年4月に独立。

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