「透明なパンツ」で起業。恐るべき新世代が大人から愛される理由

20歳の高山泰歌(たかやま・たいが、写真右)と19歳の金丸リリアン(かねまる・りりあん、写真左)。大学生の二人はいま、「透明なパンツ」づくりに熱中している。

と言っても、二人がつくるメンズ向けのボクサーパンツは透けて見えるわけではない。透明なのは、パンツが我々の手元に届くまでの道筋だ。

どこで、誰が、どんな風につくっているのか。パンツ1枚をつくるのにいくらかかって、何円でショップに並ぶのか。二人はそうした情報をすべて公開することで、消費者が「もの選び」について考えるきっかけにしたい、と語る。

そして、二人のスピード感には恐るべきものがある。

ファッションを取り巻く社会課題へ興味を持ち、研究を重ね、19歳で起業。パンツ製作のためのクラウドファンディングで、あっという間に目標金額の二倍以上を集めてしまう。

近ごろの10代や20代の活躍を見るにつけ、社会と向き合い、行動に移すスピードが上の世代に比べ早くなってはいないか?とつねづね感じてきた。新世代はなぜそんなに「早い」のか。二人の話から探ってみたい。

大量生産・大量消費への疑問から「透明」が生まれた


二人はともに慶應大学・湘南藤沢キャンパス(通称SFC)の学生

だんご

まず、二人が作っているパンツについて教えてください。

高山

メンズ向けのボクサーパンツ「One Nova(ワンノバ)」をつくっています。大学1年生だった2017年から準備を始め、今年4月に始めたクラウドファンディングとともにブランドを立ち上げました。誰でもパンツを履かない日ってありませんよね。なので、One Novaでは毎日でも身につけたくなるような履き心地を追及しています。


股間部分のフロントポケット構造が、履いた時のゆとりを生む

高山

生地はオーガニックコットンで、柔らかな肌触り。フロントポケット構造で履いた時のおさまりもよく、ウェストのゴムがちくちくしないなど、僕自身が何度も試して細部にまでこだわっています。それから、生地の縫製や染色など、加工はすべて国内のメーカーさんにお願いしています。

だんご

製造に関する情報をすべて公開するのは、「透明」というコンセプトに繋がるんですよね。

高山

はい。元々、僕たちは二人とも世の中の「大量生産・大量消費」的なあり方に違和感を持っていたんです。例えば僕は、高校二年生の時に「ザ・トゥルー・コスト」という映画を見て衝撃を受けました。それまで何も考えずに着ていたファストファッションの服が、海外の劣悪な労働環境の工場で作られていたり、生産されすぎた服がゴミになって環境に悪影響を与えていたりすることを知ったんです。そこでエシカルファッションにも興味を持ちました。

※エシカルファッション……地球環境への負担や製造工程における無駄を省き、フェアトレードなどに配慮して作られた洋服・ファッション雑貨のこと

金丸

私は流行に流されるんじゃなく、自分にとっていいもの、納得できるものを選ぶことが大切だと思っていました。そのもの選びの基準の一つに「背景がわかること」があります。手元に届くまでの背景がわかるものの方が、信頼できるし、愛着が湧くと思うんです、そうした透明性の高いブランドを目指していたので、「透明なパンツ」ってキーワードがすごくしっくりきたんです。

だんご

言葉のインパクトがあるので、気になっちゃいますね。

高山

毎日履くけど、他人から見えないパンツをあえてこだわって選ぶ。ものづくりの背景まで想像してみる。そういう小さなところから、皆さんが「もの選び」を考えるきっかけになればって思っています。

パンツは「固さ」をうまく外して、キャッチーに見せてくれる

だんご

そもそも、なぜパンツになったんでしょう?

高山

二人でアイデアを出し合ってて、何気なく出たアイデアだったんです。「パンツ」ってキャッチーだしユニークだよね!と盛り上がって。

だんご

ということは、パンツをつくりたかったというより、起業への思いが先にあったと。

高山

僕は中学生のときから起業を考えていました。父や祖父が経営者で、身の回りにサラリーマンがいなかったのが大きくて。それに高校で生徒会長をしたり、18歳選挙権を考えるイベントを立ち上げたりしたこともあって、一人ではなくチームで大きなことをしたいとずっと思っていました。

金丸

私は起業を目指してたわけではないんですが、高校生の時からフェアトレードのバナナに関する活動をしてました。

だんご

高校生でバナナを?

金丸

私の母がフィリピン出身なんです。だからフィリピンにはすごく愛着があったんですが、高校生の時に『バナナと日本人』という新書を読んだのをきっかけに活動をしたいと思うようになって。というのも、その本には日本で売られているバナナの8割がフィリピン産で、バナナは農園での労働条件や農薬などいろんな問題を抱えていると書いてあって。何も知らなかった!と思って調べていくうちに、産地直送で適正なお金が農園に入り、無農薬で作られている「バランゴンバナナ」の存在を知りました。

金丸

そこで、代々木公園にブースを出しているAlter trade japanのもとで、バランゴンバナナの販売を一緒にするようになったんです。フィリピンやバナナのことを知ってもらえたら、という思いももちろんありましたけど、純粋に楽しいからやってました。でも、フェアトレードみたいな言葉が前に出ちゃうと、すごく真面目に受け取られてしまうんです。もちろん真面目で、大事なことなんですけど。

だんご

お客さんの方も身構えちゃうというか。

金丸

そうですね、どうしても固くなってしまう難しさがあって。バナナは続けていきたいけど、今後自分が何をやっていくかモヤモヤと悩んでいる時に、泰歌に誘われたんです。泰歌とは、高校の塾からの知り合いで。大学の新歓の時期に「何かやりたいけど、何をやればいいのかわからない」ってラーメン屋で相談したんですよ。そしたら泰歌が「ラーメン奢るから、一緒に起業しない?」って。

だんご

ラーメン屋というのが大学生っぽくていいですね(笑)。

高山

僕は高校在学中に起業のアイデアをずっと考えてたんですが、同時に起業する仲間を探してたんです。起業は一人じゃなくてチームでするものって意識があって。社会に貢献するようなビジネスをやりたかったので、同じフェアトレードやエシカルの分野に興味があるリリアンは面白いなと思ったんです。

金丸

最初は軽いノリでOKしちゃいました(笑)。結果的にパンツをつくることになって、すごくよかったんです。エシカルなものを発信したいけれど、エシカルを前面に出すのは違うなと思っていたので。やっていることはエシカルファッションに近いんですけど、固いイメージを外して「透明なパンツって何?」というところから入ってもらえる今の形をすごく気に入っています。

「大学一年生の君たちだから、投資する」

だんご

そこから大学生二人でどのように進めていったのでしょう?

高山

資金面でも、製造面でも、とにかく色んな方に助けていただいてます。最初の資金は、僕の中学の同級生のお父さんが貸してくれました。

だんご

え、同級生のお父さん?

高山

会社の経営者をされていて、中学生の頃から「いつか起業します!」と話していた僕をすごく気に入ってくれてたんです。「パンツで起業します」と話したら、いつでもいいから返してね、と、まとまった金額を貸してくれて。その後、実業家の方や、SFCの教授にも投資していただいています。

だんご

初めて起業する二人に、それだけ皆さんが期待して、力を貸してくれるのはなぜだと思っていますか?

高山

実業家の方は、僕たちのチーム力とアイデアを評価してくれました。SFCの授業にゲストとしていらした時に、僕が「こんなパンツを作って、ネットだけで販売します!」と話したんです。すると「D2Cモデルでパンツを売るんだね、面白い」と返ってきて。

※D2C……Direct- to-Consumerの略。自ら企画・製造した商品を店舗や問屋などを介さず、自社のECサイトを通じて販売するビジネスモデルのこと。

高山

店舗を持たず、ネットだけで販売するのは僕たちにとってごく自然な発想だったんですが、今の小売業でトレンドとされる形だったんです。それに興味を持ってくださったので、すぐD to Cメインのビジネスモデルを資料にまとめて、もう一度プレゼンしに行きました。そうしたら「大学一年生のチームでここまで考えられてて、リサーチもしてある。他に三〜四年生の候補の子もいるけど、一年生の君たちに投資する」と即決してくれました。

だんご

なるほど! 話を聞いていると、投資してくれた皆さんは二人の若さに加えて、行動して実行に移す力も評価してくれているように感じますね。

金丸

確かに私たち、行動第一かもしれません。気になる人にはすぐ会いに行きましたし、パンツを作ってくれる工場を探すときも、まず電話して、工場まで足を運んで相談しました。ファッション業界の常識なんて知らなかったんですけど、とにかくまず動こう!と。生地を作っていただいてる「アタゴ」さんと最初にやりとりした時は、製造をお願いするには資金が足りず、一度保留にしてたんです。でも、その後に実業家の方からの投資が決まったので「お金が集まったので作れます!」と電話したら「やるなあ」と。そこからアタゴの社長さんも熱心に話を聞いてくださって、「Made in Japanのものづくりにこだわる学生を応援したい」と、最初の生地代を工場側で負担してくれました。

「早さ」の理由は繋がりやすさ?

だんご

二人は自分たちの「若さ」は意識してますか?

金丸

正直なところ、私はバランゴンバナナの活動をしていた時の経験から「若さは一つの武器になる」と思っていました。放課後に制服でイベントなどに行くと、何も言わなくても「なんでここにいるの?」と声をかけてもらえたり、快く相談に乗ってもらえたりするんです。SFCの起業に関する授業では「場合によっては『学生』という肩書きを使いましょう」という話もあります。

だんご

いい意味で若さを利用するということですね。それに若いからこそ、周りの大人がアドバイスしやすいというのもあるかもしれません。

高山

アパレルブランド「ALL YOURS」の木村昌史さんには、すごくアドバイスをいただいてます。最初にお会いした時から、クラウドファンディングのプロジェクトの見せ方を熱心に助言してくださって。リリアンと二人でALL YOURSのインターンもさせていただいてるので、お世話になりっぱなしです。


ALL YOURSの木村昌史さん。ALL YOURSは24ヶ月連続でクラウドファンディングを行い、ブランドの新作を発信。また、クラウドファンディングへ挑戦する人へのアドバイスも積極的に行なっている

だんご

二人の活動もそうですけど、最近の若い人は社会問題に目を向けるのがすごく早いな、と思っていたんです。

金丸

情報を手に入れやすいのは理由の一つかもしれません。入れようとしなくても、自然と目に入ってくるというか。

だんご

リリアンさんがバナナの問題を知るきっかけは本でしたが、その後のリサーチはインターネットで?

金丸

もちろん文献での情報収集もしましたが、インターネットでの情報収集もしました。インターネットのおかげで情報にすぐアクセスできますし、人にも会いやすくなっていると思います。木村さんを知ったのも、Twitterがきっかけです。ALL YOURSのイベント情報を見て「会いに行こう!」と思い、ALL YOURSのクラウドファンディングで「イベントのスタッフをする権利」というリターンを選択しました。そのスタッフ経験を機に、アドバイスをいただくようになったんです。

だんご

なるほど。SNSの存在も大きいですね。知るきっかけも多いし、そこからのアクションも起こしやすいと。なるほどなあ。

かっこいい大人たちに助けられて、ここまで来た


パンツ製作のためのクラウドファンディングでは、目標の200%超えとなる120万円以上を集めている(2018年5/28現在)

だんご

クラウドファンディングがすごく順調ですが、今の感想はどうですか?

高山

思った以上にうまくいってます! 知らない方たちからもたくさんご支援いただいていて。大学内でも「パンツキャラ」として有名だったんですが、プロジェクトページを見て「お前らが何をやってるか、やっとわかった!」と言われました(笑)。あとは、実際にパンツを履いていただいた感想が楽しみですね。

金丸

でも、私たちだけではこれだけの結果は出てないと思います。特にALL YOURSの木村さんと出会ってから色んなことが進んだと思っていて。それに私は感情で、泰歌は理論で話す真逆のタイプなんです。だから、二人だけで話していると自分の考えをうまく言語化できないことが多くて、自信を失うこともありました。でも、木村さんという大人が第三者目線で入ってくれることで、二人の関係もうまくいっていて。プロジェクトだけじゃなく、私たちの事業に長期的な目線でアドバイスをくださいますし、木村さんの存在は大きいです。


週に数日、ALL YOURSで二人はインターンとして働いている

高山

ALL YOURSの他のスタッフさんも、クラウドファンディングで忙しくてインターンの仕事ができていないのを「いいよ、二人のことを信頼してるから、楽しみながらやっていこう」と言ってくれて。大人に信頼されるってすごく感動しましたし、気づけば周りにかっこいい大人ばかりになってました。

だんご

話を聞いてると、二人のまっすぐさがとても伝わってきます。パンツのコンセプトの「透明」は、言い換えれば「素直」ですよね。若いだけじゃだめで、二人の素直な姿勢があるからこそ、それだけの大人を巻き込んで、助けてもらえるんだろうなと思います。

金丸

助けてくださった大人の皆さんもそうですし、クラウドファンディングのパトロンの皆さんにも本当に感謝してます。プロジェクトが終わったら皆さんに感謝を伝えるイベントをしたいですね。餃子パーティーとか!

高山

餃子パーティーはどうかな…(笑)。

だんご

二人の今後を応援しています。今日はありがとうございました!

☆クラウドファンディングは6/3まで実施中。支援はこちらから!

One Nova公式サイト
http://www.onenova.jp/

【世界一"透明な"パンツ】一度はいたら忘れない。心地よいパンツができました!
  • 内容
    大学生二人が立ち上げたブランド「One Nova」が、「世界一透明なパンツ」を作るためのプロジェクト。透明性の高いものづくりを通じて、自分が本当に「とっておきと思えるもの」を選ぶ暮らしのあり方を提案します。


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書いた人 : 友光 だんご

BAMP副編集長。1989年生まれ、岡山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。出版社勤務ののち、2017年3月より編集者/ライターとして独立。Huuuu所属。インタビューと犬とビールが好きです。

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