「Facebookは1日1投稿」
成功プロジェクトの“絞る”広報術

古材で文化を作るリビルディングセンタージャパンの挑戦

CAMPFIREでクラウドファンディングに成功し、長野・諏訪に「リビルディングセンタージャパン」を作った東野唯史(アズノ・タダフミ)さん。

40日間で540万円以上を集めた彼のプロジェクトは、単に理想を掲げるだけでなく、徹底した客観視に基づく戦略があった。

目標金額の決め方からプロジェクト説明文の書き方まで、これからクラウドファンディングに挑戦する人への成功のヒントが詰まったインタビューをお届けする。


プロジェクトデータ
  • プロジェクト名
    「廃材利用で豊かな暮らしを。信州諏訪にリビルディングセンターをつくる!」
  • 支援総額/目標
    5,434,900円/3,000,000円(目標の181%・447人が支援)
  • 内容
    アメリカ・ポートランドにある建築建材のリサイクルショップ「リビルディングセンター」を長野・諏訪に作るための資金集め

目標金額の理由は「旬」と「社会的意義」

「ゴミとして処分されているものが、10年後、資源と呼ばれる文化を作りたい」ーそんな想いを掲げ、古材の買取・販売を行うリビルディングセンタージャパン(以下、リビセン)。

東野さんがリビセンを作るにあたり、資金集めのためにクラウドファンディングを利用したのはごく自然な流れだったという。

東野

僕は元々、デザイナーとして店舗やゲストハウスの空間づくりを手がけていたんです。その施主さんの中にクラフドファンディングを利用している人がいて、彼らのプロジェクトを手伝った経験がありました。だから、リビセンを諏訪に作りたいと思った時、資金集めの手段としてすぐにクラウドファンディングが頭に浮かんだんです。

友光

予備知識があったんですね。

東野

はい、これまでにプロジェクトを手伝う中で、例えば目標金額は「200万円ならいける」という実感値がありました。もちろん、コンセプトがあって、日頃からFacebookを利用していて、かつ本気でなりふり構わずプロジェクトにチャレンジすれば、という条件つきですよ。


妻の華南子さんとともに空間デザインユニット「medicala(メヂカラ)」として活動してきた東野さん。依頼を受けた土地に住み込み、依頼主やその友人たちと共に一緒に作るというスタイルで日本各地をまわってきた

友光

リビセンの目標金額は300万円でしたよね。実感値から100万円アップした理由はなんだったんでしょう?

東野

まずは当時、注目されていた「ポートランド」というキーワードがあったことです。「リビルディングセンター」はアメリカ・オレゴン州のポートランドに元々ある施設で、僕たちのリビセンは、その名前とロゴを正式に引き継いで作ったんです。旬の土地のカルチャーを日本に持ってくるということで、プロジェクトにも関心が集まるはずと考えました。
もう一つは、社会的意義ですね。

友光

と、いいますと?

東野

リビセンで行なっているのは、主には古材と古道具の買取・販売です。でも、その根っこには、「ReBuild New Culture(=世の中で見捨てられたものに再び価値を見出す)」という理念を広く知ってもらうことが目標にあるんです。この理念に、社会的意義を感じてもらえると信じていました。

友光

単なるビジネスではないということですね。

東野

いま、日本中で古い空き家やビルが壊されているんですが、古い建具や床板には、時間が育ててくれた美しさ以外にも、いまでは手に入らない材料や製材方法などもあります。そんな古材の価値や魅力を、リビセンでは伝えたいと考えているんです。だから僕たちは、持ち主から依頼を受け、解体現場から建材を買い取ることを「レスキュー」と呼んでいます。

友光

目標を超える金額が集まったのも、その理念に共感が集まったことは間違いないですね。

普段のSNS運営が“ここぞというとき”に効いてくる

東野

理念を伝えるために、クラウドファンディングはとてもいいツールだという思いもありました。

友光

クラウドファンディングが広報に使えるということですか?

東野

FacebookのようなSNSは、情報がすぐに流れてしまいがちですよね。でもクラウドファンディングなら、自分たちの言葉で説明したページができて、かつプロジェクト終了後も残ります。

友光

なるほど、リビセンを知らない人でも、プロジェクトページを読めばリビセンがどんな施設で、何を目指しているかがわかるんですね。

東野

もちろん、単純にキャッシュが足りなかったって理由もありますよ(笑)。お金と広報の目的は半々くらいです。

友光

普段、広報にはFacebookを使っているんですか?

東野

はい、ただ宣伝めいた投稿は極力しません。あと、Facebookでの投稿は1日1回、多くても2回まで。それ以上やるとTLが汚れちゃうんですよね。情報の純度を上げないと、本当に届けたい人にアプローチできなくて、ここぞというときに使えません

友光

クラウドファンディングは、まさに「ここぞというときのお願い」ですね。

東野

普段は使わない【拡散希望】を使いましたね。いつも言ってたらダメですが、年に一回くらいなら皆シェアしてくれるので。それも、覚悟を示すっていうことだと思うんです。CAMPFIREでは、支援金を受け取る仕組みに関して「All-or-Nothing」「All-In」の2つの形式がありますよね。

友光

集まった支援金を、募集期間内に目標達成した場合にのみ受け取れるのが「All-or-Nothing」で、「All-In」では目標に達さなかった場合でも、集まった金額だけ受け取れるんですよね。

東野

いろんな考え方があると思いますが、僕自身は、「All-In」だと自分に甘い気がしたんです。だから、「All-or-Nothing」を選びました。期間を40日にしたのも、同じような理由です。工事が終わってリビセンが完成してるのにまだ資金を集めてたら、「クラウドファンディングの資金なくても工事できたんじゃん」と思われそうじゃないですか。「完成前に達成して資金が集まる→リビセン完成→集まったお金で支払う」っていう流れが理想だなと思って。

友光

確かにわかりやすいです。

東野

実際にその流れで支払ったんですが、担当の税理士さんには「とても健全なキャッシュの流れ」だと言われました。工事費でゴソッと抜けるところにクラウドファンディングの出資金が入るので、キャッシュが崩れず、税務上とてもいいらしくて。

友光

“クラウドファンディングは税務上オススメ”とは! しっかり書いておきます(笑)。

プロジェクトの説明は自分のことを書きすぎない


リビセンの2〜3階では、解体現場からレスキューしてきた古道具の販売も

友光

東野さん、いろんなことに関して、客観視の意識が強いですよね。

東野

それは普段から意識しています。プロジェクトページの「プロジェクト本文」も、皆さん、わりと自分のことを書きすぎてしまう傾向があると思うんです。その人の経歴が半分以上続くと、読み手が途中で疲れてしまうと思います。

友光

確かに、クラウドファンディングの説明って複雑になりがちですね。

東野

今までのことがあって、ポリシーがあって、これからやりたいプロジェクト内容の話があって……と、要素が多いですからね。ただ、全部説明する必要もないと思うんです。どこをターゲットにするか、つまり出資者は誰かを考えると、ある程度は絞れるはず例えば友人が多くて、彼らの出資が期待できる場合は、自分の経歴は少しでいいですよね。友人ならある程度知っているはずですから。

友光

それより、自分がやろうとしている先に何があるかを書いた方がわかりやすい。

東野

そうですね。あと、うちの場合は「文章を考える人」と「書く人」を分けました。僕の想いを自分で書くのではなく、妻に書いてもらったんです。


東野華南子(アズノ・カナコ)さん。リビセンに併設されているカフェを切り盛りしている

友光

華南子さんがライターみたいな感じだったんですね。

東野

妻というフィルターを通すことで、僕の思想が強く出すぎることがなく、伝わりやすい文章になっていると思います。それから、文章の推敲にも気を使いました。妻だけでなく、スタッフ全員に文章を見せて意見をもらい、公開するまでに5回くらい校正しています。とにかく、いかに読む人にスムーズに読んでもらえるかに気を使いました

失敗は、リターンを細かくしすぎたこと


リビセンで販売している古材。木の種類や値段が書き込んである

友光

相当考えた上でプロジェクトに臨んだということがよくわかったのですが、それでも失敗だったということはありましたか?

東野

出資者へのリターンを細かくしすぎると、発送がとても大変ということを知らなかったんです(笑)。うちはTシャツをリターンに設定してたんですが、発送前にサイズを一人一人に確認する作業が発生したんです。しかも、発送先の名前や住所のデータを宅配業者の伝票用の形式に変えるのにもひと苦労で。CAMPFIRE側に頼むこともできたんですが……。

友光

発送を自分たちでやるなら、その手間も考えてリターンを設定した方がいいということですね。

東野

はい、失敗を踏まえていうと、あえて出資額を一万円以上みたいに決めて、リターンの数を減らすのも手だと思います。結局、三千円のものを頑張って積み上げるより、三万円のものが一つ売れる方がいいですよね。

友光

お店の経営みたいですね。何をやるにしても、計画や戦略はとても重要だと思います。


東野さんがデザインを手がけた長野・下諏訪のゲストハウス「マスヤゲストハウス」。古材がふんだんに使用され、リビング&バースペースには大きなペチカストーブが

東野

一度、文章にしてみるのは大事ですね。僕たちは、店を作りたいという依頼を受けたら、まず施主さんに事業計画書と収支計画書を提出してもらうんです。

友光

その計画書って、皆さん最初からできてるものですか?

東野

いえ、大体の人はできてないです。なので、その人がぼんやり思ってることを言語化するために、紙に書き出してまとめる作業をお手伝いしてる感じですね。

友光

経営コンサルみたいですね! デザインの相談でそんなところまで。

東野

じゃないとデザインが書けませんから。紙にまとめると、後から振り返れますし、人にも自分のやりたいことを説明できるようになりますよね。せっかくなら長くお店を続けて欲しいし、その人自身がお店をやることで幸せになって欲しいですから。

友光

それも、結果的に世の中を良くするということに繋がりますね。

東野

リビセンが、この諏訪だけじゃなく日本のいろんな土地にできて「ReBuild New Culture」という理念が広まってほしいと思っています。でも、まずはこのリビセンをきちんと安定させて、自分たちの足場を固めたいですね。もし、他の土地でリビセンをやってみたいという人がいたら、どんどん応援しますよ。

友光

全国にリビセンができれば、日本の建物ももっと面白くなりそうですね。
最後の質問になるのですが、東野さんにとって、「小さな声」ってなんでしょうか?

東野

いまリビセンが取り組んでいることそのものが、僕たちの「小さな声」だと思います。自分たちのコミュニティだったり、リビセンに来てくれる人と話していると、みんな古いものが好きなように感じてしまいますが、日本全体でみると、まだまだそうではなくて。リビセンの活動を通じて、もっと仲間を増やしていきたいです。

プロフィール
東野唯史(あずの・ただふみ)
1984年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒。空間デザインの会社に勤務後、2010年に世界一周の旅。帰国後の2011年からフリーランスデザイナーとして活動開始。2014年、妻の華南子さんとともに空間デザインユニット「medicala」の活動を始める。2016年10月、「リビルディングセンタージャパン」をオープン。
店データ
  • リビルディングセンタージャパン
  • 住所:長野県諏訪市小和田3-8
  • 定休日:水・木曜日
  • 電話:0266-78-8967
  • 営業時間:カフェ部門=9:00~18:00/古材部門=11:00~18:00

書いた人 : 友光 だんご

1989年生まれ。岡山県出身。早稲田大学文化構想学部卒。出版社勤務ののち、2017年3月より編集者/ライターとして独立。Huuuu所属。犬とビールを見ると駆けだす。

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