アイデアだけで終わらせない。電通がクラウドファンディングと仕掛ける、新しいインターンシップのカタチ

プロジェクトデータ

新卒採用の通年化や早期選考の広がりとともに、企業のインターンシップは年を追うごとに多様化している。そんな今、広告会社・電通による「電通ワカモンインターンシップ 2019」が話題を呼んでいる。

その特色は、クラウドファンディングをインターンシップに取り入れたことだ。CAMPFIREと連携し、学生が立案したアイデアをクラウドファンディングのプロジェクトとして公開。資金調達やリターンの設計までをプログラムに組み込んだ。プログラムに参加した19名の学生のプロジェクトには、既に目標金額を達成しているものも複数ある。

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学生のアイデアをコンペ形式で評価するインターンシップが多い中で、電通の「アイデアの考案から実現まで」を一気通貫にプロデュースするプログラムはひときわ目を引く。仕掛け人である電通 中部支社の説田 佳奈子さんに、この型破りなインターンシップの舞台裏を聞いた。

「昨年通り」からの転換。アイデアで終わらず、思いを形にできるインターンへ

説田さんが所属する「電通若者研究部(電通ワカモン)」は、電通の社内横断プロジェクトだ。10~20代の若者の実態に迫るプランニング&クリエーティブユニットで、2016年以来、電通のインターンをトータルプロデュースしている。

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今回の「電通ワカモンインターンシップ 2019」では、学生を対象に「ほうっておけないこと」をテーマにアイデアを募った。7月初旬にエントリーを締め切り、9月上旬に行われた6日間のプログラムには大学生19名が参加した。インターン中は座学と提出課題のブラッシュアップを行い、プログラムの終了直後からクラウドファンディングのプロジェクトを公開している。

今年のインターン企画が社内でキックオフしたのは4月のこと。当初は前年度までのアイデア構想が中心のインターンシップを踏襲する予定だったが、5月下旬に思い切ってプログラムの一新を提案したという。「これからの時代はアイデアに終わらせず、思いを形にできる人が重宝される」という説田さんの想いとともに、アイデアを形にするうえでのパートナー探しやプロジェクトマネジメントのスキルを伝えられるプログラムの実現に至った。

「ワカモン」に向き合う中で生まれた、アイデアコンペ型インターンシップへの疑問

インターンシップを刷新した背景には、電通ワカモンの一員として若者に向き合う中で見えてきた課題があったという。

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説田さんは「大人と若者の間には知らず知らずのうちに“溝”が生まれています。この“溝”は、大人が若者の行動や価値観を断片的にとらえ、一方的に上から目線で評価していることに原因があるのではないでしょうか」と語る。学生がアイデアを発表し、社員が評価を行うアイデアコンペ的なインターンシップにも、同様の理由で疑問を抱いていたという。

「社員が学生を一方的に評価するインターンを変えたかったのです。大人から若者への一方通行の矢印をなくし、主語を若者に返そうと思いました。」

そのための手段として説田さんが着目したのが、クラウドファンディングだった。クラウドファンディングでアイデアをプロジェクトとして公開すれば、社会全体からフィードバックを得られる。また、企業の肩書きではなく、個人の想いに共感することで支援を集められるクラウドファンディングの仕組みが、インターンのコンセプトにマッチすると感じたという。

CAMPFIREとの連携に至るまでにも、説田さんの想いがあった。かねてより「小さな声でも上げることに意味がある」というCAMPFIREの理念や広告クリエイティブに共感していたと語る説田さん。CAMPFIREが2019年3月に開始した若年層の支援プロジェクト「CAMPFIRE YOUTH(https://campfire-youth.com/)」 を目にし、自らインターンシップとの連携を提案した。

参加学生は「プロジェクトリーダー」実現ありきで磨かれたアイデア

こうして始まった、初めてのインターンシップ。19名の参加者に対しては、アイデアがクラウドファンディングのプロジェクトになることを初めから伝えた。インターン中も、徹底して「参加者」ではなく「プロジェクトリーダー」として接したという。

6日間のプログラム中、学生は、企画の課題・ゴール・実現のために必要な要素を毎日ブラッシュアップしながら、クラウドファンディング用の広報文も考えたという。クラウドファンディングの実施にあたっては、CAMPFIREがレクチャーやリターンの設計などを支援した。

アイデアの実現まで踏み込んだインターンシップになったことで、学生・社員の双方にプラスの変化が起きているという。
学生のアイデアは、インターン期間中に驚くほどブラッシュアップされていった。説田さんは「ダイヤモンドの原石を磨いていくようだった」と、笑みをこぼす。

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例えば「生理用バスマット」のプロジェクトは、エントリーシートの段階では男女間の生理に関する理解が薄いことに対する課題意識は強かったものの、「何を実行したらいいか」が薄かったという。周囲に相談を重ねることで、実現可能なアイデアに落とし込まれていったそうだ。逆に課題が抽象的だったのは、児童養護施設での漫才イベントを企画した「聖なる夜の漫才教室」だ。インターン期間中に「このイベントで実現できることは何なのか?」という問いを立て、コンセプトを明確化し、目標金額の達成に至ったという。

今まではアイデアを一方的に評価する立場だった社員たちの姿勢も大きく変わった。学生がプロジェクトの主体になり、社員はメンター的に学生をサポートする側に回ったことで、「社員の言葉が評価ではなくアドバイスに変わった」と説田さんは語る。

爪痕を残すことが一番の成果。考え抜いた人にしか見えない景色がある

インターン期間終了後から掲載しているプロジェクトは、10月24日をもって公開終了となる。学生たちは資金調達の結果をもとに、いよいよアイデアの実行段階に移る。

インターンの参加者からは、共感によって支持を集めることの大変さを語る声が多いそうだ。説田さんによれば、学生たちは著名人にSNSを通じてコンタクトを取ったり、プロジェクトの取材を求めたりと、賛同を得るための仕掛け作りに試行錯誤しているという。説田さんは「(実行まで)やりきると宣言しているので、アイデアを世の中に出すための責任感が醸成されている」と、学生たちのひたむきな姿勢を語った。

プロジェクトの進捗は様々だが、失敗になるプロジェクトはないと語る説田さん。「調達目標を達成するだけが成功ではなく、行動してみたことが大きな価値。考え抜いた人にしか通じない景色があると思っている。世の中に爪痕を残すことも、一つの目標達成だと思っている」とエールを送った。

「アイデアを実現するためのアイデア」を育てる、満足度100%のインターン

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説田さんの想いとともに刷新された「電通ワカモンインターンシップ」の評判は、学生からも社内からも上々だ。参加した学生のアンケート結果は、「満足度」「インターンシップとしての新しさ」ともに100%を記録した。採用部からも、面白い取り組みとして評価されているという。「学生時代にクラウドファンディングを経験していると、自分のアイデアを形にしたことがある状態で社会人としてスタートダッシュを切ることができます。“アイデアを実現するためのアイデア”を持っている人材として、社会で重宝されると思う」と語る説田さん。この手応えを、来年度以降のインターンシップにも生かしていきたいと明かした。

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書いた人 : 中山 明子

1992年生。埼玉県出身。東京大学文学部を卒業後、独立行政法人、新卒採用メディア『ONE CAREER』編集部を経て、現在は株式会社キメラと兼業で編集者・ライターとして活動。就活生向けインフルエンサーとしてSNSの運用も行う。

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