一週間で資金調達成功の「東京メトロアクセサリー」のページ制作とリターン設計のコツ

「大人バカ」をコンセプトに、ユニークなオリジナルグッズを次々と世に送り出す株式会社キャビネット。このオリジナルグッズの展開を支えているサービスがクラウドファンディングだ。
2018年1月に資金調達を開始した足の形をした製氷皿「足氷」はページ公開から僅か7時間半で目標金額を達成。そして、2019年7月に東京メトロのマークをしたピアス・イヤリング「東京メトロアクセサリー」も開始一週間という早さで目標金額に到達した。
そんなヒットメイカーであるキャビネットの代表取締役・田中哲矢さんから、クラウドファンディング活用ポイントについて話を伺う。

プロジェクトデータ
  • プロジェクト名
    耳に地下鉄?路線マークが可愛いアクセサリーになりました!
  • プロジェクト目的
    支援者の獲得(=事前の生産数量確保ツールとして活用)
  • 募集期間
    2019年7月12日~9月9日
  • 調達金額
    193万円(2019年8月23日時点)
  • プロジェクトURL
    https://camp-fire.jp/projects/view/176488

自由な発想で商品を作るために生まれた「大人バカ」

「私たちはクリエイターやアーティストと共に新しい価値を創造しコンテンツや商品で人を笑顔にする」という企業理念を持つ株式会社キャビネット。
もともとは、アニメ・漫画・ゲームなどライセンス商品の企画・製造・販売を行っていた同社が、“もっと自由な発想で商品を創りたい!”そんな想いで始めたオリジナルグッズの企画・製造・販売。
2017年10月からは「大人バカ」をコンセプトにした商品開発をスタートさせた。

●「大人バカ」とは?

一見くだらないと思われてしまう商品やサービスのアイデアを全力で考え、世の中に商品として広めるために始まった「大人バカ」。

大人バカ

例えバカな思いつきだとしても、細部までこだわり創り上げることで、素晴らしいアイデアへと変わる可能性がある。
世間へ笑いを届けるかもしれないし、何かの役に立つかもしれない。そんな想いを表現した事業が、この「大人バカ」なのだ。

●「魚ケース」との出会い

「大人バカ」の着想のきっかけは、魚ケースを製造代行したことから始まる。

ほっけペンケース

『ほっけはペンケースに似ている』そんな理由から、クリエイターの乙幡啓子さんが編み出したハンドメイド作品だった。その作品に田中さんが目を付け、キャビネットの雑貨製造ノウハウが結びついたことで、量産化が実現した。現在はヴィレッジヴァンガードでの販売を展開させている。
この乙幡さんとキャビネットとの出会いが、クリエイターとの「大人バカ」ネットワークを広げていったのだ。

●クラウドファンディングを始めるキッカケ「足氷」

乙幡さんとさらなるタッグを組み商品化を進めていたのが「足氷」だ。

足氷

「足氷」は、ヴィレッジヴァンガードが主催する第2回「雑貨大賞」で見事大賞を受賞した『湖面から突き出た足製氷器』のことである。
田中さんが乙幡さんに量産化を持ちかけ、クラウドファンディングを知らない状態で商品の企画・開発を開始した。
しかし、珍しい形であること、さらに通常の製氷器より大きさが必要であることから、なかなか生産工場が見つからず開発は難航していた。
そして、やっと生産工場が見つかったタイミングで、クラウドファンディングの存在を知ることとなる。

構想から3年、開発着手から2年6ヶ月、CAMPFIREでの資金調達をスタートさせたのだ。資金調達の前から話題を呼んでいた「足氷」は、なんとページ開設から僅か7時間半という早さで、目標金額の111,111円を達成。支援総額は1,764,910円と目標金額を遥かに上回る支援金を叩き出した。

一週間で目標金額を達成した「東京メトロアクセサリー」

そして現在、新たなオリジナル商品として「東京メトロアクセサリー」の開発に向けた資金調達をしている。

キャビネットの社員が考案したアイデアのもとに誕生。その名の通り“東京メトロ各線のロゴ”をピアス・イヤリングにした商品だ。東京メトロから許諾を受け、“東京メトロ公認のグッズ”になった。

同商品では、2019年7月にCAMPFIREでページを開設。目標金額を1,500,000円に設定している。この金額は「足氷」と比較してもかなり挑戦的な数字だった。代表の田中さんも「この目標金額設定はかなりの賭けでもあった」と語るほど。

しかし、そんな不安をかき消すほど駆け出しは好調。ページ開設初日から2日間ですでに目標金額の30%を達成していた。極めつけは、ファッション情報のWEBメディア「FASHIONSNAP.COM」で東京メトロアクセサリーが取り上げられた。これがキッカケで多くのファッション好きな女性から注目を集め、一週間で目標金額の1,500,000円を達成した。

現在も支援総額を伸ばし続けており、クロージングとなる2019年9月10日までどれほどの金額に上るのか期待が高まる。

2回の目標金額を達成したキャビネットが語る、クラウドファンディングを成功させる3つのポイント

ヒット商品を生み出し続けるキャビネットは、多くのクリエイターのアイデアからオリジナル商品の開発を進めているという。様々なアイデアをヒットへと導くのは、これまでライセンス商品の企画・製造・販売で培ってきた経験が真価を発揮している。

しかし、ただ面白い商品を企画するだけでは、目標金額の達成は困難だ。支援者の目を引くための“見せ方”こそが目標金額達成の鍵になるだろう。そこでキャビネットから、クラウドファンディングで成功させるための3つのポイントを教わった。

1)“利用シーンを思い浮かばせる”こと

商品を実際に利用しているシーンが思い浮かぶようなページのつくり方を意識しているのだという。

「足氷」では、ドリンクやお酒、素麺に足氷が浮かんでいるシーンなどの写真を撮ってページの中に掲載。支援者が思わずツッコミを入れてしまうようなページ設計を演出した。

足氷2

また、氷以外の用途でも、足氷の型を利用してチョコを作るなど、バラエティに富んだシーンの数々を掲載している。

「東京メトロアクセサリー」も同様に工夫したと田中さんは話す。

「東京メトロの駅前で待ち合わせしている人がこのピアスを付けていたら、思わず2度見してしまいますよね。東京メトロの電車に乗っている人が付けていてもそうですが、実際の利用シチュエーションを考えたとき、心の中で突っ込んでしまう、話のネタになってしまう、そんな瞬間が思い浮かぶことを意識しています。これは商品開発を進めるうえでも重要にしている要素ですね」

ただの商品説明ページにならないように、写真やイラストなどを多く用いたり、文章は長くなり過ぎず、簡潔明瞭に商品の利用シーンを記載することが重要だと話した。

2)“思わずクリックしたくなる”を意識すること

最初の掴みを取る上で重要なのが、“アイキャッチ画像”と“タイトル”だ。田中さんも、どうやったらクリックしてもらえるかはかなり意識して考えているのだという。

東京メトロアクセサリー3

当初「東京メトロアクセサリー」のアイキャッチとして考えていたのは、実際にピアスを付けた写真だったそうだ。しかし、これではインパクトに欠けると考えた田中さんは「東京メトロの入口に立ち、路線マークとピアスを一緒に写したら面白いのでは?」と思いつき、採用。見事に目を引くアイキャッチとなった。

アイキャッチ画像

さらに、あえて支援者が疑問に思うようなタイトルも田中さんが編み出した。
「耳に地下鉄?って一見全く意味が分からない(笑)“意味が分からないから気になる”という流れでクリックしてもらうことを狙いました」

キャッチ―な画像とタイトルが合わさることにより、思わずクリックしたくなる設計を成功させた。

3)“初速の早さを演出する”こと

支援金額の初速の速さは、プロジェクトの注目を集める重要な要素の一つだ。そこで、初動で一気に支援金を集めるためにキャビネットが考えた施策は「リターンのバリエーションを増やすこと」だった。

当初リターンに設定していたのは、1個セットとフルセットの割引販売のみ。しかし、それでは値段に開きがあり過ぎるかもしれないと気づいた田中さんは、リターンのバリエーションを増やすことを考えた。

まず、セットの個数を1個、3個、フルセットに。そして、割引にも幅を持たせたのだ。「超早割」「早割」「CAMPFIRE割」の三段階の割引を設定。

リターン画像

プロジェクトページ開設すぐに「超早割」が完売した。立ち上がり時に注目を集めることにかなりの貢献をしたのだそう。

どんどん難しくなっていく?クラウドファンディングで気を付けるべき3つの教訓

商品のインパクトだけでなく、プロジェクトの見せ方にも意識を向けているキャビネット。そういった意識が2回の資金調達成功へ導いているといえる。「今後もクラウドファンディングの活用は積極的にしていきたい」と語る田中さん。
一方で、過去2回のクラウドファンディングを振り返り、「今後資金調達を成功させていく上で気を付けていきたいこと」を話してくれた。

●“PRのためだけ”に使わない

最近、企業・個人のクラウドファンディングの利用が増えてきている。
以前であれば、クラウドファンディングに掲載するだけで、物珍しさから注目を集めることができた。そのため、サービスのPRとして活用する企業・個人が多かった。

しかし、最近はそういった企業や個人が増え、クラウドファンディングが広まり、一般化しつつあることで、掲載だけでの資金調達が難しくなっている。「プロジェクトの掲載をしたうえで、自分たちでもプロモーションプランを考えておくことが重要だと思う」と田中さんは強い口調で語った。

プロモーションとして始めやすいSNSの活用や、サンプル品を複数制作して特定の人たちに使用してもらい口コミ的な広がりを作るなど、様々なプロモーションの方法があるだろう。
プロジェクトページの開設前には、サービスとマッチしたプロモーション施策を事前に考えておくことが今後は必要かもしれない。

●起案者・支援者、双方が“損をしない”

お互いのメリットがなければ、いくら支援金が集まったとしても、サービスとして成功しない。

「起案者のアイデアを一緒に盛り上げる役割を担うのが支援者です。支援者の人たちにどれだけ面白いと思ってもらえるか、メリットを感じてもらえるかによって、サービスの盛り上がりは変わってくると思うんです。僕は“大人バカ”という悪だくみ乗ってくれる人を募集するために、どれだけ面白いと思ってもらえるかを意識してます」

田中さんが言うように、支援者に魅力的なプロジェクトだと感じてもらうことが、熱量の高い支援を集められる。しかし、支援者のメリットばかりを意識するだけでは起案者が損をする。
リターンの設計は分かりやすい例だ。支援者を募ることを意識するあまり、利益に結び付かないリターンはサービスとして成り立たないだろう。
「原価計算をしながらサービス起案者も、支援してくれる人も納得するような、ちょうどいいバランスの数字を決めることも重要です」

●失敗も成功も“同じことは繰り返さない”

クラウドファンディングで一度資金調達に成功したとしても、次に資金調達が成功するかというのはまた別問題である。そして、逆も同じことが言える。一度失敗したからといって、次に失敗するとは限らない。失敗したから終わりというわけではないのだ。

「失敗でも成功でも、その時のノウハウは必ず残っています。諦めずに継続することが大事なんです」と田中さんも話している。何度も挑戦することで、徐々に知見が貯まっていく。
この知見は、成功しているプロジェクトをただ見て研究していても貯まるものではない。実際にクラウドファンディングを利用してみないと分からないことが多くある。

その貯まった知見を活用する一方で、プロジェクトの内容によって見せ方を変えていく必要もある。ただ同じことを繰り返し行うのではなく、都度練り直しながら、プロジェクトに最適な見せ方を見つけていくことが必要だ。
キャビネットでも、「足氷」「東京メトロアクセサリー」では見せ方を大きく変えているのだという。

「足氷は“面白さ”に振り切りました。一笑い取るような時に利用してほしいという想いがあったので、ギャグ路線のアイキャッチや説明文で支援者にアピールしたんです。

一方、東京メトロアクセサリーは普段も使うような、日常的に使ってもらうアイテムにしたかった。そのため、ギャグに走り過ぎないように気を付けました。ウケ狙いとして付けるのではなく、人目を引くけど、ちゃんとオシャレなアイテムとして利用してもらいたいという想いがあったので。カジュアルな印象を持ってもらうための画像や文章に振り切りましたね」

このように商品のターゲットによって見せ方を変えたことで、「足氷」と「東京メトロアクセサリー」は全く違う層の支援者が集まった。「東京メトロアクセサリー」は、オシャレに興味のある支援者の獲得に結びついたのだ。

クラウドファンディングの魅力は“冒険できること”

今後も新しいプロジェクトの資金調達を考えているキャビネット。最後に「なぜ、クラウドファンディングを活用して資金調達をしているのか」という問いを投げかけたところ、田中さんは「冒険ができるから」と笑顔で語ってくれた。

「事前にどれだけの人が必要だと感じてくれているか把握できることで、安心して冒険できます。
アニメやゲームの商品を長年作ってきて感じるのは、“何が当たるのか分からない”ということです。作るときには毎回ヒヤヒヤしながら、ある意味博打のような感覚で企画から販売までしなければならない。そのため、なかなか冒険できず売れそうな商品を作ることもあります。
しかし、クラウドファンディングであれば、事前に需要の把握ができて、売り先も決まっている。この安心感が自信に繋がって冒険できる基盤を作れます。
失敗しても成功しても、市場的にどれだけ需要があるか把握できるだけでも収穫です。その収穫からさらに新しいモノを生み出せるのは、クラウドファンディングの魅力だと思いますね」

キャビネット代表田中様2

<企業概要>
・企業名:株式会社キャビネット
・所在地:東京都千代田区神田神保町1-44-2 TNKビル1F
・代表者:田中 哲矢
・事業内容:ライセンス商品企画・製作・卸売・管理、音声収録スタジオの運営・管理、玩具・雑貨等の企画・製作・卸売、インターネットTV局運営

区切り線
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書いた人 : 阿部 裕華

取材好きなフリーライター/編集者。WEBメディア中心に編集・企画・進行管理(たまに撮影・デザイン)もやります。アニメ・コンテンツビジネス・映画・音楽(主にBUMP)が大好きです。

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